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鶏卵による食物蛋白誘発胃腸炎(FPIES)のケースの中で

2023.11.14

投稿者
クミタス

食物蛋白誘発胃腸症(FPIES)においては、食物の摂取後に嘔吐や血便、下痢などの胃腸症状が出現し、原因食物として牛乳(粉ミルク含む)や鶏卵、うずら卵、また小麦 、米、そば、大豆、ナッツ(カシューナッツなど)、魚(サケ、カレイ、サワラ、カジキなど)、貝(アサリ、ホタテなど)、魚卵(イクラなど)、果実(リンゴ、バナナ、サクランボ、キウイフルーツなど)、肉(鶏肉など)などの報告が見られています。

国内での鶏卵による食物蛋白誘発胃腸炎(FPIES)においては、卵黄が原因であることが多いところですが、
卵黄の消化管アレルギーと特異的IgE値
https://www.kumitasu.com/contents/hyoji/4074
中には卵黄と卵白による食物蛋白誘発胃腸炎(FPIES)のケースも見られています。卵黄による食物蛋白誘発胃腸炎(FPIES)と卵黄と卵白による食物蛋白誘発胃腸炎(FPIES)では、違いがあるのでしょうか?

2018年4月から2023年1月までに当院にて食物経口負荷試験(OFC)を行い、卵黄による食物蛋白誘発胃腸炎(FPIES)と診断され、その後、卵白の食物経口負荷試験(OFC)を施行した51症例のうち、卵黄単独の食物蛋白誘発胃腸炎(FPIES)48例と、卵黄・卵白合併食物蛋白誘発胃腸炎(FPIES)3例について後方視的に検討したところ、卵黄の初回摂取月齢の中央値(四分位範囲)は、卵黄単独の食物蛋白誘発胃腸炎群で6か月(6-7か月)、卵黄・卵白合併食物蛋白誘発胃腸炎群で8か月(6-8か月)と差は認められなかったが(p=0.2088)、発症月齢がそれぞれ7か月(7-8か月)、10か月(9-10か月)(p=0.0060)、診断月齢がそれぞれ9か月(8-11か月)、12か月(12-16か月)(p=0.0361)と両群で差が認められた。
また卵黄単独の食物蛋白誘発胃腸炎群では26例(54.2%)が寛解していたが、卵黄・卵白合併食物蛋白誘発胃腸炎群では卵黄による食物蛋白誘発胃腸炎の寛解例はいなかった(出典・参照:大倉有加 池守悠太 山田聡 下村真毅 谷口宏太 縄手満 小林一郎 高橋豊 KKR札幌医療センター小児・アレルギーリウマチセンター 卵黄単独food protein-induced enterocolitis syndrome(FPIES)と卵黄・卵白合併FPIESの臨床像の比較)

上記報告では、卵黄による食物蛋白誘発胃腸炎(FPIES)で、卵白による食物蛋白誘発胃腸炎(FPIES)を合併する症例は、卵黄単独の食物蛋白誘発胃腸炎(FPIES)症例と比べて発症月齢が遅く、寛解状況にも違いが見られています。
他の報告では、卵白アレルゲンに感作がある卵黄の食物蛋白誘発胃腸炎(FPIES)患者さんの約3割は、卵白の食物経口負荷試験で即時症状または食物蛋白誘発胃腸炎(FPIES)症状の誘発の可能性がある(出典・参照:伊藤環 三浦陽子 西野誠 柳田紀之 佐藤さくら 海老澤元宏 国立病院機構相模原病院臨床研究センター・小児科 牛久愛和総合病院小児科 卵白感作がある卵黄 FPIES 患者に対する卵白の食物経口負荷試験 (OFC))との示唆もなされています。
今後も卵黄単独の食物蛋白誘発胃腸炎(FPIES)、卵黄・卵白合併食物蛋白誘発胃腸炎(FPIES)について、他報告も含め掲載していきたいと思いますが、食物蛋白誘発胃腸炎(FPIES)については、以下も併せてご覧ください。
卵黄による食物蛋白誘発胃腸炎(FPIES)における寛解
https://www.kumitasu.com/contents/hyoji/2002

食物蛋白誘発胃腸炎(FPIES)と症状が似た疾患
https://www.kumitasu.com/contents/hyoji/4384
感染性胃腸炎と食物蛋白誘発胃腸炎(FPIES)
https://www.kumitasu.com/contents/hyoji/4418

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